「だれの目にも読むことのできる記号で、『ガンダルフこれにあり』と、書いたのじゃから」

インターネット上に投稿するときに、実名がいいか匿名がいいかについて議論がありますが、それについて考える時、思い出すのが、指輪物語のこのくだりです 。

吹雪の吹き荒れる山で、エルフにも、ドワーフにも火をおこすことがかなわず、仕方なくガンダルフという魔法使いが、湿った薪に魔法で火をつけます。その代償として、魔法使いの名前が公然とさらされます。それは、敵に自分の居場所を知られる行為でもあるのです。

インターネットに名前を著すのは、魔法使いガンダルフのように、覚悟が必要です。

 アーサー・C・クラークが言ったという「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」とも奇妙に符合します。

誰でもインターネットに自分のプライバシーでさえも公開できる時代はまた、誰かが自分に成りすますことのできる時代でもある、ということです。

 

とうとうしまいにガンダルフ自身がいやいやながらも手を出すことになりました。かれはそだを一束手に取ると、しばらくそれを高くかかげ、それから「ナウア・アン・エドライス・アメムン!」という命令の言葉とともに、杖の先をそだの中に突っ込みました。するとたちまち緑がかった青い焔がほとばしり出て、薪はパチパチとはぜながら燃え上がりました。

「だれか見ている者があれば、少なくともこのわしはかれらに姿を現したも同然じゃ。」と、彼はいいました。「わしは、裂け谷からアンドゥインの河口にいたるまで、 だれの目にも読むことのできる記号で、『ガンダルフこれにあり』と、書いたのじゃから」

 J.R.R.トールキン『旅の仲間』評論社、1992年

  At last reluctantly Gandalf himself took a hand. Picking up a faggot he held it aloft for a moment, and then with a word of command, naur an edraith ammen! he thrust the end of his staff into the midst of it. At once a great spout of green and blue flame sprang out, and the wood flared and sputtered. ‘If there are any to see, then I at least am revealed to them,’ he said. ‘I have written Gandalf is here in signs that all can read from Rivendell to the mouths of Anduin.’

 Tolkien, J. R. R.. "The Fellowship of the Ring"  HarperCollins Publishers ,2009



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